コンビナトリアル計算化学とは?

 

東北大学宮本明教授が提唱する、コンビナトリアルケミストリーの概念を計算化学に導入したもので、周期表のありとあらゆる元素の機能を計算化学により高速に予測することにより、計算化学を材料開発のための高速スクリーニング手法として活用する新しい方法論

 

 

~実践に役立つ「計算化学」を目指して~


近年の理論化学の急速な発展に呼応し、計算化学は触媒材料、半導体、エレクトロニクス材料、有機材料、高分子材料、潤滑剤、セラミックスなど様々な先端材料の研究開発に大きなインパクトを与えています。しかし実際には、従来の計算化学は新しい材料の予測にはほとんど貢献してこなかったのも事実です。従来の計算化学は既に実験によって素晴らしい性能・機能を持っていることがわかっている材料に対して、実験的には理解しがたい電子・原子レベルでの機能発現メカニズムを解明することを主目的としてきました。例えば、実験的にNOx分解反応に高い活性が確認されているCuイオン交換ゼオライトに関しては、その触媒反応機構について遷移状態を含む高精度な理論計算が数多く行われていますが、Cu意外の活性金属種を探索しようとする試みは皆無です。このような計算化学はコンビナトリアルケミストリーという概念が生まれる以前の1回の反応で1つの高純度な化合物を創る従来の実験方法に対応し、計算化学には先導された高速かつ革新的な材料開発を実現することは到底不可能です。

そこで、宮本研究室では「実践的に役に立つ計算化学」を具体化するための全く新しい方法論として、コンビナトリアルケミストリーの概念を計算化学に導入した「コンビナトリアル計算化学」を提唱しました。

 

コンビナトリアル計算化学を活用した製品開発は、日本独自の高付加価値製品の開発を可能にするばかりでなく、製品開発期間の大幅な短縮、さらには開発コストの削減にもつながる画期的な方法論です。本手法を多くの研究者、特に企業で働く実験研究者が会得することにより、「コンビナトリアル計算化学」が世界をリードする全く新しい市場・産業の創出、さらには日本経済の発展が大いに期待できます。

コンビナトリアル計算化学
表面科学Bol.25, No.11, pp 690-698,2004
特集「表面科学研究のコンビナトリアルケミストリー」より抜粋
著者:久保百司、古山通久、宮本明

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